2016年12月2日金曜日

常夏でも季節はめぐって

雨季は涼しく過ごしやすい日が多いのだが、やはり雨が続くと色々起きる。特に雨季の終わりは雨の量がすごくて、豪雨にみまわれたらあっという間に主要道路が冠水して川みたいになる。道路というものは平らじゃないようで、ひとたび水没すると深いところが隠れていたりと危ない。しかし、慣れた人たちは車でもバイクでも、ちゃんと浅瀬を探しながら移動している。

我が家の前も降雨量によって、たまに川のようになる。地下の排水が追いつかないのだ。原因はシンプルなもので、排水路が泥や葉っぱなどでいっぱいだから。我が家は数年前から、ドブさらいのトラックに来てもらって定期的に泥を吸い出している。でも、よそのお宅のほうまでは勝手にできないので結局あまり意味がないのかもしれない。

毎年この時期の恒例とはいえ、今年は特に道路冠水の規模が大きかったように思う。パトンでは主要道路を渡るのにゴムボートまで出動するほど。SNSで動画を見たら結構流れが強く本当に川のようだった。ただ、ここは島なのでいつまでも冠水しているわけではない。雨の勢いがおさまれば少しずつ自然に排水していく。だから役所もドブさらいに力を入れない。

鬱陶しいこんな時期は、周囲で住まいの愚痴も増えてくる。雨漏り、停電はもはや定番。変わったところでは、近所の電柱に急にスピーカーが取り付けられ、連日爆音が流れるので引っ越した、とか、屋根裏で産まれた子猫が、重みで天井を突き破って落ちてきた、など。今年もなかなかアメージングな話題を耳にした。

でも、乾季が訪れるとそんな話もぐっと減り、みんなカラリと気持ち良く過ごすようになる。観光客も増えて明らかに活気が出てくる。この変わり目が好きだ。海がキラキラ光っている。真面目な人たちは夢中になって働いて、ずるい人たちは、何かおいしいものにありつこうとアンテナを高く張る。混沌としているのに、どこかのんびり。近所の池では川鵜が姿を見せ始めた。風の向きが変わる。今年もいよいよ、プーケットのベストシーズンがやってくる。

今回をもってぷけ嫁3面記事は終了となりました。長い間ありがとうございました。

2016年9月5日月曜日

微笑みの国から「幸せの国」へ

米国の大手情報サービス会社ブルームバーグが2016年度「世界幸福度ランキング」を発表、トップを飾ったのは、なんと我らがタイ王国だった。
この世界幸福度とは、失業率+インフレ率の合計をもとに出した指数ではかるという。正しくは「世界悲惨指数」を算出して、タイが「一番悲惨ではない国」だったのだ。ちなみに世界幸福度2位はシンガポール、3位が日本と続く。
タイの失業率は現在1.1%だそうだ。なるほど。確かに失業中で困ってるという人は周りにあまりいないかも。ただ、ローンを組みすぎて生活が苦しいとか、万年貧乏でお金がないとかいう人は常に一定数いる印象だ。あと、自営業や自称フリーランスが多く、何をしているのか職業は知らないけど、やたら羽振りがいい人もけっこういる。
インフレ率のほうは前年比0.1%程度の上昇とされている。これはもう、物価上昇についてはこの10年くらいで上がり切っちゃたのではないだろうか。2007年ごろの原油高騰期に何でもかんでも値上がりし、少し落ち着いたかと思ったら、今度はインラック政権が最低賃金を一気に50%も引き上げて、また値上げラッシュ。ただ、GDPも順調に伸びているせいか「みんなまんべんなく豊かになったなぁ」という実感はある。まぁ、徹底した国勢調査など実施していない国なので本当のところは謎だけど。
近年日本では「ワーキングプア」とか「若者の貧困問題」などが増えて社会問題になっている。タイではマイカー所有率が上がり、庶民の国外旅行もあたりまえ。日本へは観光とショッピングに行く時代になった。大学生でアルバイトをする人は少なく、親からたんまりお小遣いをもらう… 確かに幸せだ、恵まれている。しかも南国だ、みんな陽気で楽天的なのだ。
私が移住した頃は「微笑みの国」だったのが、今や「幸せの国」に進化した。日本より幸福で、おおらかな国。在タイ16年、不満はあるのに、不思議と居心地が良いと感じるのも妙に納得である。

2016年7月6日水曜日

日本は眩しかった

 約1年ぶりに千葉の実家へ行ってきた。日本は初夏、真っ青な
空が清々しい。日によっては真夏日なんて騒がれていたが、高温
多湿、熱帯モンスーン気候の国に16年も住んでいると「どこが?」
といった感じである。テレビで「今日は蒸し暑いです」という日
も、鼻の奥が乾燥してヒリヒリする。

 いつ帰ってきても、我が母国は整然としていて快適だ。WiFiの
感度もよく、ますますオーガナイズされていく成田空港。タクシ
ーは行先だけ告げればいいし、料金の事前交渉などもちろん必要
ない。実家ではシャワーの水圧が痛いほど強く、大雨でも停電の
心配は不要。すべてが規律正しく便利で圧倒される。あまりにい
い気候なのでウォーキングなどもしてみる。新道は広く安全で、
ゴミひとつなく、野良犬にも遭遇しない。野良犬どころか、猫も
みかけない。

 実は、帰省直前はプーケットの家を留守にする準備に追われて
「帰るのめんどくさい」なんて思ってしまうのだが、塵ひとつな
い成田空港に到着した瞬間に、そんな鬱々とした気持ちは吹っ飛
ぶ。そして、プーケットに戻る日が近づくにつれて、今度は日本
を離れるのが億劫になってしまう。

 それでも予定どおり夜のプーケットに戻る。空港ゲートを出る
と、客待ちドライバーたちが群れていて、むわっと湿った空気が
まとわりつく。我が家に変わりはなく、18歳の猫もなんとか元気
だ。家中散らかっているため、水も飲まずに掃除洗濯にとりかか
り、ソファに座ったきりでなんの手伝いもしない夫にキレつつも、
だいたいの片付けを終えて弱々しい水圧のシャワーを浴びる。雨
季に入り水不足は解消したようだ。雷が鳴ってるから停電になる
かも?念のためプラグ類は抜いておくか…。

 今朝まで停電や水不足の心配などない整然たる日本にいたとい
うのに、なんという違いだろう。ライフラインの次元で心配する
日常に、また戻ってきてしまったのだ。懐中電灯は各種備えてあ
る。シャワーなんて、水圧が多少弱くても水さえ出れば上々。不
便は多いけど、こんな生活のほうがなにかこう「生きてる」と実
感するのだから不思議だ。道ばたでは犬たちが寝そべり、庭を大
トカゲが横切る。私にはまだしばらく、こういう日常としての南
国島暮らしが向いている、ということなのだろうか。

2016年5月7日土曜日

幸せ感じてますか?

暑季でまとわりつくような暑さが続いている。何をするにも億劫だが、
気晴らしにタイ人の友達とエアコンが効いたバーに飲みに行くことにした。
なぜか友人はひとりウキウキと楽しげ。
話を聞くと、もうすぐタイ中部のシンブリ県まで瞑想合宿に行くという。

時々この友人は、白い服の上下を着て大きな寺院を背景に撮影した画像を
送ってくるのだが、それにまた行くらしい。白い服は、プーケットなら
ベジタリアンフェスティバルでよく見るあれだ。仏教の修行服という感じだろうか。

今回は、うちの近所にある行きつけの美容室のお姉さんと一緒に参加してくるという。
2人は一緒に出かけるような仲ではないが、瞑想合宿となると別らしい。
なんでまたそういう経緯になったのか尋ねると、
「私がよく瞑想合宿に参加してるのを知ってるから、今度一緒に行きたい、
連れて行って!と言われた」とのこと。
普通の旅行だとちょっとない組み合わせだが、瞑想合宿とは色んな垣根を取っ払うようだ。

今回のその合宿は期間が1週間以上と長め。数百人の熱心な仏教徒が集まり、
毎日ひたすら瞑想修行に励む。寝床も食事も提供される。そういえば20年くらい前、
バンコク郊外の大型寺院でカップラーメンをいただいたことがあったが、
あれも瞑想合宿だったのだろうか。

白い服を着た1000人くらいの人が集まってガヤガヤやっていた。
ジーンズ姿の旅行者などが立ち寄って、しかも軽食までお世話になっていいのか焦ったが、
一緒にいたタイ人ガイドさんは「大丈夫だから」と言っていた。
そういえば、売店でびっくりするほど高い翡翠のお守りを売っていたな。

シンブリに行く友人は裕福でいつも活動的なので、1週間もお寺にこもるなんて
辛くないのか尋ねると、「修行の間はすべてのことを忘れるの。
家のことも旦那のことも犬たちのことも。
そうすると、合宿が終わる頃にはすっきりしてまた頑張れる!」と幸せそう。
なるほど、一種の現実逃避か。私がRPG(ゲーム)の世界で、
ひたすら無心にレベル上げに励むのと一緒ではないか!

普段から毎日幸せそうな友人だけど、実際はまぁ色々あるということか。旦那さんはともかく、
愛犬たちのことまで忘れるとはな。しかし、大勢と一緒に慎ましく修行することで、満たされ、
幸福感を得られるというのはとても羨ましい。

毎週お寺の瞑想教室に通うご婦人も周りにいるので、いつかのぞいてみたい世界ではある。
でも、やっぱり新しいゲーム機を買うほうがワクワクしてしまう自分には、
まだ入れない異世界なのだろうな。

2016年2月1日月曜日

「ヘビとSNSには要注意」

年明け早々、プーケットのスネークショー施設で、観光客がニシキヘビに鼻を噛みつかれるという衝撃動画がフェイスブックで広まった。

鼻を数針縫うはめになったのは中国人の女性(20代)。動画を見ると、飼育員がとぐろを巻いたニシキヘビを抱え観光客たちに見せているところに、被害者の女性がおもむろに顔を近づけガブッ!とやられている。現場は飼育員やお客さんたちの悲鳴に包まれた。うっかり大音量で動画を見ていた私は、驚いて飛び上がってしまった。

飼育員のおじさんによると、「いつもどおり、スネークショーの後にニシキヘビと記念写真を撮りたいお客さんはいないかまわっていたら、急にひとりの女性が顔を近づけてきてヘビにキスをしようとした。ヘビは驚いてパニックになったようだ」という。ちなみに、かつてヘビがお客さんに噛みついたこともなければ、ヘビとキスをしようとしたお客さんもいなかったそうだ。

スネークショー会社の対応は早かった。代表者は「プーケットでの治療費はもちろん、中国国内での治療費も負担する」と発表、被害届が出されなかったことについて「被害者女性の不注意で起きたような事故なので、責任を感じているのだと思う」と述べた。

意外と対応が手厚いな、と感心したのもつかの間、今度はこの会社に未登録のヘビがいたことが明らかになり、認可されるまで業務停止というオチがついた。

気の毒に、被害者女性はフェイスブックに縫った鼻のどアップを晒されただけでなく、見ず知らずの大勢からたたかれる目に遭った。「2.5メートルものヘビにキスするか?」「ヘビが可哀想だろ」「また中国人が事故起こした!」などなど。

衝撃動画の絶叫(大音量)に震え、SNSの怖さを思い知り、「私も色々気をつけよう…」 と本気で思う新年。2016年もよろしくお願いします!